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不動産業界の「2007年問題」を考える

住宅新報社「住宅新報」編集長 吉岡 達也

コンピューターの誤作動によるライフラインへの影響などがさわがれた、いわゆる「2000年問題」以降、毎年のように、西暦を冠した「●●年問題」が登場している。
オフィスビルの大量供給で、ビル市況の悪化が懸念された「2003年問題」では、東京都心の空室率が同年6月に8・6%まで上昇した。オフィスビルの空室率を考える場合、一般的に3〜5%では賃料が横ばいとなり、5%を上回ると賃料が低下することになる。懸念はあったものの、その後12月には3・6%にまで戻したことで、「問題」が拡大することにはならなかった。

さて、目前に迫った「2007年問題」。一言でいうと、いわゆる団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が定年時期にさしかかり、オフィス人口の大量減少が問題視されているものだ。労働力不足に加え、業務の技術力・ノウハウを失うことによる影響も指摘されている。
このうち、不動産業界の問題としては、①東京都心部のオフィスビル供給のピーク②東京圏で相次ぐ外資系高級ホテルの開業③名古屋の大型オフィスビル完工④私募ファンドの償還期間の集中――が浮かび上がる。

まず、「オフィスビル大量供給」をみていこう。東京では03年に次ぐピークが07年に訪れる。具体的には、東京・六本木の防衛庁跡地再開発の「東京ミッドタウンプロジェクト」をはじめ、「大崎駅西口明電舎地区再開発」、「赤坂5丁目・TBS再開発」などの完工が集中している。
ビルの大量増加に加えてオフィスワーカー数の減少により、ビルオーナーが受ける影響は少なくないとみられる。空室率の上昇でオフィス賃料を下げざるをえなくなることにより、ひいてはオフィス賃料と住宅賃料の価格が逆転し、コンバージョンの流れなども想定されるところだ。
もっとも05年9月期中間決算などを見る限りでは、不動産大手の好調さが際立っているという実態がある。都心のオフィスビルの空室率は軒並み底を打った形で増益が続いている。また、03年のオフィスビル供給量は43件だったのに対し、07年のオフィスビル供給量は計13件だ。こうしたことを考えると、オフィスビルに関しての「2007年問題」は軽微と考えるのが自然だろう。

次に「東京圏のホテル開業ラッシュ」だ。05年はヒルトン系の「コンラッド東京」や「マンダリン・オリエンタル東京」などがオープン。07年には「ザ・ペニンシュラ・トーキョー」などが開業し、都心は一気に外資系高級ホテル間競争が加速することが予想される。
これについては、ホテル関係者の間からは「高級ホテルと低料金のホテルに2分化していく」「多様化がむしろホテル市場の活性化につながるのではないか」という意見が大勢を占めており、市況悪化への不安はいまのところない。
「名古屋のビルの供給過剰」については、名古屋駅北側に「名古屋ルーセントタワー」(地上40階)が完成、また「トヨタ毎日ビル」(地上46階)も完工。一気にオフィスの大量供給となる。加えて名古屋市の伝統的市街地、栄・伏見エリアでも大規模店舗を中心とした再開発も重なる。 こうした中、地元不動産業者からは「既存ビルの淘汰が進むという問題点もあるが、市場の活性化が進むことで、名古屋の都市機能がより円滑化していく。新ビルの登場は歓迎」という声が聞かれている。

以上、「2007年問題」は不安要素もあるが、こと不動産分野においては、むしろ好材料が目に付く。 それよりも気になるのは、団塊の世代がほぼリタイヤする「2010年問題」以降だ。東京23区のオフィスワーカー数は2000年から10年後には約5%減、20年後には約10%減となる。都心の労働力低下に加え、地方の地盤沈下もより深刻化することになることが考えられる。 そんな中、都心の団塊世代が定年後地方に移住して、新生活を進めるという流れがみられる。いくつかの地方自治体では、人口増や税収の向上などから、積極的に受け入れる動きもある。中には、ローンを完済した住宅をサブリースによって運用し、賃料収入を移住先の生活に宛てるといった生活パターンも出てきた。

節目となるいくつかの時期を乗り越えていく意味でも、地方自治体の魅力に富んだ街づくりや、不動産業界の創意工夫などがより求められてくるといえそうだ。

【よしおか・たつや】

住宅新報社「住宅新報」編集長

1964年生まれ。筑波大学大学院修了(法学修士)。毎日新聞社記者、NHK記者、住宅新報社「月刊マンション管理ジャーナル」編集長を経て現職。著書に「少額裁判制度概観」ほか。