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"50+(フィフティプラス)"のコミュニティ

インテリアコーディネーター 町田 ひろ子

こんなシーンを連想してみて下さい。
大きな窓から差し込む光。明るくさわやかで健康的な空間です。
掃き出しに近い大きなガラス窓からテラスの中庭が見えます。
ウッドデッキが敷きつめてあって、ここはアウトドアですが、もう一つのリビングスペースとしても使います。
大小いくつか並べられたプランターの観葉植物は、今欧米でも人気のある"竹"。
東洋的な鉢に植えられた孟宗竹が、陽を一杯に浴びて気持ちよさそうにのびのび育っています。
モダンデザインのキッチンカウンターやキャビネットが配置され生活臭さがありません。
もうこの空間はキッチンが料理をつくるだけの場所からキッチンリビングと呼んでもおかしくない暮らしの中心的なステージ。舞台がデザインされているのです。
スポットライトを浴びながら(日中なので点灯されていませんが)オープンカウンターで料理しているのは男性です。エプロンなど野暮といわんばかりにスタイリッシュで、すぐ脇には食事にかかせないワインが並んでいます。
中庭で食事をする為でしょう。お盆を持ちオードブルを運んでいるのが女性です。料理をしつらえる事がこんなにかっこよく見えるキッチンを想像できますか。
これは数年前に出かけたヨーロッパ最大の国際家具見本市と併催されていたクッチーネ(キッチン)展で提案されたこれからのインテリア展示で、その時手に入れたカタログのシーンと重ねて再現してみました。
ドイツの最大手ポーゲンポール社の最新キッチンモデルテーマは"厨房の主役は男性"だったのです。
さすが世界のマーケットを視野に入れた企業で、展示もカタログも大変お金をかけた豪華版でした。
ヨーロッパのライフスタイルは進化しつづけていますが、すでに米国ではそれに近い生活を実践している夫婦がたくさんいます。
ホームパーティーが日常にしっかり定着しているからこそ夫婦の協力体制が大切なのでしょう。日本でも採り入れてほしいライフスタイルです。

米国コロラド州ボルダーに在住する姉夫婦を訪ねた時の話を少ししてみたいと思います。この地域は今"50+(フィフティプラス)"といって団塊世代の人達が早期退職をして、もう一つの人生を楽しむために集まって暮らす。そんなライフスタイルを実現している北米でも注目の的のアクティブシニアコミュニティになっているのです。
ここでは住宅はすべてゴルフ会員権付きで分譲されていて、テラスに続くバックヤードガーデンは素晴らしいショートホール並みの青々とした芝生のパッティンググリーンが広がっています。どこからゴルフボールが飛んでくるかもわからないフェアウェイハウジングより安全で、その上コース並みに起状が巧みに設計されていて、周辺の住民は気軽にそこでパットの練習も出来ます。
もちろん朝夕はスプリンクラーが自動的に散水してくれるので手入れをする必要もなく、自宅のテラスからも充分に景色を楽しむことが出来ます。 肝心のゴルフ場は自宅から徒歩数分という快適な立地です。
さて、それではいよいよセレブリティなこのコミュニティのハイライトを紹介させていただきたいと思います。
コロラドの冬のスポーツは何といってもスキーです。このコミュニティでは最大の特徴が"スキーイン スキーアウト"設計なのです。
スキーヤーはスキーの板をつけてスキー場まで自宅前から滑って行く事が出来るのでそう呼称して命名されています。 滑って数分のところにスキーリフトはあります。
このスキースロープは、中高年が優雅に一日楽しめる初心者向けのスキー場ですが、そのリフトの頂上にはその着地点からすぐ設置されたリフトがあります。次々に連結するいくつかの山の頂上や屋根にむかって変化に飛んだスキー場へどんどんのびて行く本格的なスキーコースです。
さんざん滑り降りて最後が自宅前まで来られるので、疲れた身体でスキー板を背負って歩く必要がまったくありません。というわけでスキーをつけたまま出発、スキーをつけたまま自宅へもどるので"スキーイン スキーアウト"になるのです。その為住宅の設計に新しい特徴が生まれます。
滑ってきたスキー板をはずしてすぐ入れる別入口があり、スキーウェア・スキー板はそのまま掛けて乾燥させられるウォークインクロゼットになっていて、濡れたまま室内に入っていくことなどまったくありません。 そこを通りすぎればすぐキッチン・ダイニング・ファミリースペースが一体になったグレートルームと呼ばれるシンプルですが開放的なワンルーム空間に続いていきます。
ファミリースペースの中心には必ずそれぞれイメージの異なった個性的なデザインの暖炉があり、インテリアのフォーカルポイントになっています。
窓は二重(ペアグラス)が標準で高気密・高断熱になっています。当然室温は一定に保たれ真冬でも外では雪が深々と降っていても、室内は暖かく半袖のTシャツでも暮らせます。 暖炉は暖かくするというよりも気持ちを優しくほぐし、リラックスさせてくれる道具としてインテリアの必需品として設置されているのがおもしろいところです。

"50+(フィフティプラス)"のコミュニティはそんな活動的なライフスタイルを楽しむ団塊世代のパラダイスなのです。 日本でももうすでに団塊世代の大量退職が始まっています。ライフスタイルプランナーを自負している私も積極的にアクティブシニアのライフスタイルを提案していきたいと思っています。それでもこれだけの規模・スケールで展開されているコミュニティは日本ではまだまだ皆無で一つとして実現されていないのが残念です。 百聞は一見にしかずと言われています。一度出掛けてみるのはいかがでしょう。

町田 ひろ子 経歴 ― Hiroko Machida ―

公的委員 国際インテリアコーディネーターユニオン(IICU)会長/
国際インテリアデザイン協会(IIDA)名誉永久会員/
(社)インテリア産業協会・関東甲信越支部運営委員/
(社)全国産業人能力開発団体連合会理事/
NPO屋上開発研究会理事/
東京商工会議所女性会会員/
輸入住宅産業協議会副会長/
長崎総合科学大学客員教授
代表作 フォーシーズンズホテル東京「椿山荘」(インテリア設計)
西海橋コラソンホテル(総合プロデュース)/
ホテルアソシア高山リゾート(インテリアデザイン)/
青山ラピュタガーデン・レストラン(インテリア設計)/
名古屋アソシアマリオットホテル(インテリア及びFFE実施設計)
WAC IN 長崎・特養棟他(インテリアデザイン・デザインコンサルティング)
その他多数
著書・監修他 「インテリアコーディネートの常識」翻訳・監修/
「ホームファニシングブック」翻訳・監修/
「インテリアコーディネータになれる本」(大和出版)/
「インテリアコーディネートの100ポイント」(学芸出版社)/
「インテリアコーディネートの実際」翻訳・監修/
「インテリアスタイルの技法」翻訳・監修/
「元気で美しく生きる住まいの知恵」(ぎょうせい)/
「Beautiful Barrier−Free」翻訳・監修/
「福祉住環境コーディネーターになる本」(大和出版)/
「あなたもなれるインテリアコーディネーター」(大和出版)

【まちだ・ひろこ】

インテリアコーディネーター

武蔵野美術大学産業デザイン科を卒業後、スイスで5年間家具デザインを研究。'75年にアメリカ・ボストンへ渡り、「ニューイングランド・スクール・オブ・アート・アンド・デザイン」環境デザイン科を卒業。'77年に帰国し、日本で初めて「インテリアコーディネーター」のキャリアを提唱。 '78年に「町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー」を設立。 '85年「学校法人町田学園」設立。現在全国7校のアカデミー校長として教育活動に努めている。また一級建築士事務所(株)町田ひろ子アカデミーの代表取締役として、インテリア・プロダクトデザイン・環境デザインと幅広いジャンルのプロジェクトを手掛けている。'00年からはインテリアコーディネーターなど住環境関連のスペシャリストを派遣する人材派遣会社(株)アイシースタッフの会長も務めている。
http://www.machida-academy.co.jp/