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防犯に強い住まいづくり
〜共同住宅の防犯性を考える〜

マヌ都市建築研究所 主任研究員 亀山 恒夫

前回に続き今回は、マンションやアパートなど共同住宅を中心に侵入等に対する防犯についてお話ししたいと思います。

共同住宅の侵入窃盗

前回同様まず、共同住宅の侵入窃盗の状況を見てみましょう。
 警察庁の統計情報では、平成18年中「住宅への侵入窃盗」123,000件余りのうち、約33,000件を3階建て以下の共同住宅、約17,000件を4階建て以上の共同住宅が占めています。全国の住宅の種類別戸数で比べると、千戸あたりの侵入窃盗では、3階建て以下の共同住宅への侵入窃盗がとても高いことが分かります。一方、4階建て以上の共同住宅では平均よりも低くなっています。(調査年と調査方法が異なるのであくまで参考値としてご覧ください。)
 3階建て以下の共同住宅には低層の賃貸アパートが含まれます。4階建て以上の共同住宅は団地の住棟やマンションが該当します。

【全国の住宅戸数と住宅への侵入窃盗の発生場所別認知件数】
  総数 一戸建て 3階建て以下の
共同住宅
4階建て以上の
共同住宅
住宅戸数 4686万戸 2649万戸 960万戸 1061万戸
侵入窃盗の認知件数 123,403件 73,155件 33,372件 16,876件
千戸あたりの認知件数 2.6件 2.8件 3.5件 1.6件

※ 住宅戸数:「平成15年住宅・土地統計調査確報集計結果」総務省統計局より。3階建て以下の共同住宅は長屋建てを含む。
※ 侵入窃盗の認知件数:「平成18年の犯罪情勢」警察庁より

共同住宅の侵入手段

それでは共同住宅はどこから、どのように侵入されているのでしょうか。
再び警視庁(平成19年上半期)のデータ
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/ppiking/ppiking.htm)を参考にします。
 3階建て以下の共同住宅(注:資料では「その他の住宅」となっています)では、窓のガラスの一部を割り、クレセントを狙って侵入する「ガラス破り」によるものが半数を占めています。次に多いのが鍵をかけていない窓や扉から侵入する「無締まり」によるもので、両方をあわせると8割以上を占めています。
 一方、4階建て以上の共同住宅でも「ガラス破り」、「無締まり」の侵入手段が順に多くなっていますが、両方あわせても全体の5割強に留まっています。次に「サムターンまわし」や「合鍵」、「錠破り」、「ピッキング」など玄関が対象となっていると思われる侵入手段が続いており、あわせて3割以上を占めています。
 共同住宅では、1階(地面に接している階)と2階(その上の階)の住戸が侵入被害の多くを占めています。ガラス破りによる侵入はこのような住戸で多く発生しています。一方、3階以上では、玄関や共用廊下などに面した窓からの侵入が発生しています。

侵入に対する防犯の考え方

共同住宅においても一戸建て住宅と同様に「防犯環境設計」による対策を考えてみたいと思います。侵入盗を対象とした場合、住戸を見守りやすく、狙われにくくするため、「監視性」と「領域性」を高め、個々の住戸への「接近を制御」し、そして「対象(狙われる住戸)」を侵入に対して強化することで、侵入犯罪がおきやすい状況の改善を進めます。 ここで注意したいのは、共同住宅と一戸建て住宅との違いです。共同住宅は複数の住戸が廊下や階段、エレベーターで結ばれ、共用玄関(エントランス)や集合郵便受け(メールコーナー)、駐車場、ゴミ置場など、住んでいる方が共同で利用する「共用部分」があります。この共用部分を防犯上どのようにとらえるかが対策のポイントとなります。
 このような共用部分は侵入時の経路となることと、車やバイク、自転車を狙った犯罪やいたずら、時には痴漢などの犯行場所となることもあります。また、一言で共同住宅といっても、小さなアパートから、マンション、高層の住棟が立ち並ぶ団地、超高層マンションまで種類は様々です。更に対策を講じる場合も、建物(住戸)が賃貸か分譲か、場所が専用部分か共用部分かによって、建物の所有者や管理者、管理組合の承認、協力が必要となります。   共同住宅ではこのような視点を意識しながら対策を検討しましょう。

共同住宅での防犯対策

[3階建て以下の共同住宅の場合]

2、3階建てのアパートでの侵入手段は一戸建て住宅の場合と似ています。データが示すように地上から近づきやすい窓が狙われやすくなっているようです。このため、2、3階建てのアパートの場合も一戸建て住宅と同様の防犯対策が考えられます。建物や侵入口となる窓が道路などから見えやすいように「監視性を高め」、建物の周囲や廊下、階段などの共用部分の手入れに気を配り「領域性を高める」ようにします。また、特定の経路以外からは簡単に住戸に近づけないように「接近を制御」し、玄関扉、錠、窓ガラスなどを侵入に強いものにするなど「対象(住戸)を強化」します。

[4階建て以上の共同住宅の場合]

4階建て以上の共同住宅でも、共用部分や1、2階の住戸の窓などは、できるだけ周りからの見通しが利くようにして、「監視性を高める」ことが望まれます。また、建物周りや共用部分の手入れ(管理)に気を配ることで「領域性を高め」、住戸については玄関や窓などを侵入に強いものにして「対象(住戸)を強化」します。

建物内外の見通しに配慮した共用玄関

しかし、規模の大きいマンションなどではすべての箇所に気を配ることは難しいでしょう。目の行き届かない共用部分に関係者以外の者が立ち入ることはできるだけ避けたいところです。このような場合、管理人を配置したり、オートロックシステムや防犯カメラの設備を設置することで、「接近を制御」したり「監視性を高める」ことが考えられます。

オートロックシステム

但し、設備に頼ってしまうことには問題もあります。共用玄関のオートロックシステムには建物内への人の出入りを管理する一定の機能はありますが、部外者を完全にシャットアウトできるものでもありません。また、非常口や駐車場への出入口など、共用玄関以外の出入口から建物へ自由に入れるようでは全く意味がありません。防犯カメラは建物の人の出入りを記録したり、撮影場所での犯罪の抑止を期待できますが、いたずらや犯罪行為を止めることはできません。また、そもそも映像が不鮮明であったり、肝心な場所が撮れていなければ意味がありません。

エレベータ内の様子を表示するカメラモニタ(赤枠内)

設備の設置にあたっては、その目的を明確にして、目的に則った機能を持たせるとともに、設置後の適切な運用(維持・管理)が大切です。防犯カメラの設置にあたっては記録映像の管理や運用においてプライバシーに気を配る必要があります。

共同住宅での対策にあたっては所有者や管理組合の理解や承認が必要となります。「防犯環境設計」に基づき、防犯上の問題点を明らかにし、そのためにどのような対策が必要なのか、コストパフォーマンス(費用対効果)はどうか、どのようにすれば所有者(管理組合員)や居住者の理解と協力が得られるのかをあらかじめ十分に検討する必要があります。共同住宅の防犯は、つまるところ建物の維持・管理の問題となります。防犯に関わる問題意識を住民同士で共有し、前向きに課題に取り組む環境を日頃から整えることが大切になります。

最後に

 ここまで、住まいの防犯の考え方や防犯対策について、簡単に紹介させていただきました。特に共同住宅の対策は、建物の立地や種類によって多種多様です。「防犯環境設計」という切り口で、実情に併せて対策を考えていただきたいと思います。防犯に関わる理論や取り組み、個々の防犯対策については、書籍やインターネット等で大量の情報が提供されています。以下に参考となる公的なホームページをいくつか紹介させていただきます。  住まいの防犯について、皆さんで考えていただくきっかけになれば幸いです。

[犯罪統計]  
警察庁・統計 http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm
警視庁・統計 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/anzen/sub5.htm
警視庁・犯罪発生マップ http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/yokushi/yokushi.htm
※各道府県の犯罪統計はそれぞれの警察本部において公表しています。
[簡易防犯診断]  
埼玉県・あなたの住まいの防犯診断 http://www.pref.saitama.lg.jp/A10/BH00/bouhan/
[防犯対策]  
警察庁・住まいる防犯110番 http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/index.html

【かめやま・つねお 】

マヌ都市建築研究所 主任研究員

千葉大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了。 住宅政策に関わる一連の業務や、既成市街地のまちづくりに関わる業務、景観・街並み形成に関わる業務、防犯・防災まちづくり、防災計画に関わる業務などを主に担当。共著書「ドイツのまちづくりNPO」など。