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防災に強い住まいづくり
〜住まいの安全対策のポイント ①〜

螢泪姪垰垠築研究所 取締役・上席主任研究員 神谷 秀美

今回は、大地震などの災害時に少しでも被害を減らし、被災後も住み続けられるような住まいづくりのポイントをご紹介します。

住まいの安全は“地盤”を知ることから

地震は地面が揺れる現象です。硬い地盤か、軟弱な地盤かによって揺れの大きさは異なり、どのような地層で構成されているかによって液状化の起き易さは違います。また、水は高いところから低いところへ流れます。周囲より数センチメートルでも低いところがあれば、洪水の際にはそこに水が集まります。さらに、土砂災害は急な斜面や軟弱な斜面などが崩れて発生するものです。

このように、多くの災害は地面と密接な関係を持っています。ですから、どのような地盤に建っている住まいかによって、災害時に心配される被害の種類や程度が異なります。

住まいの安全を考えるための第一歩として、まず、住まいが建っている(これから建てようとしている)地域の地盤を知るとことから始めましょう。そして、その地盤特性に応じた安全対策を考える必要があります。市役所の防災担当部署などに相談すれば、地域の地盤についての情報が得られると思います。ちなみに、下の表のようなところでは住まいが地震被害を受けやすいと言われているので要注意です。

軟弱な地盤 液状化しやすい地盤
  • ・かつて田や沼だったところ
  • ・かつて川が流れていたところ
  • ・かつて谷地だったところ
  • ・砂質の地盤
  • ・近くに川、沼、湖、海がある
  • ・地下水位が高い
新潟県中越地震の被災地・山古志村

新潟県中越地震の被災地・山古志村は、固い地盤の上に柔らかい地盤が堆積した地すべりが発生しやすい斜面地だった。

“基礎”や“土台”に注目

住まいが建っている(これから建てようとしている)地域の地盤がわかったら、次は住まいの建物です。建物でまず注目すべきなのは、地面との接合部である基礎や土台などです。

これは以前、木造住宅の耐震改修に積極的に取り組んでいる建築家から聞いた話です。
「木造住宅の耐震性は壁の量や位置ばかりが問題にされる傾向にあるが、実際に古い建物を調べてみると、基礎が傷んでいたり、土台や柱の根元が腐っているケースも少なくない。白アリの被害などを受けているものもあり、そのような建物ではいくら壁を補強したところで、大地震が起きたら足元から崩れてしまう。十分な耐震性を確保しようと思えば、やはり基礎や土台をきちんとチェックし、そこから補強していかなければならないが、それには手間と費用がかかるため、みんななかなかやりたがらない。」

阪神・淡路大震災では、古い木造住宅の倒壊が目立ちましたが、その原因のひとつには、土台や柱の腐食があったと言われています。鉄筋コンクリート造の建物も1階が潰れたものが多く見られました。やはり、足元の強化の必要性を感じます。そして、基礎や土台を強化するということは、水害や津波災害など、地震以外の災害においても有効なことなのです。

最近は、ほとんどの自治体で住宅の耐震診断を助成しており、自治体によっては無料で診断してくれるところもあります。そのような制度を利用するなどして、現在のお住まいの基礎や土台の状態を確認し、もし、傷んでいたり、腐食しているようであれば、面倒くさがらずにきちんと補強することをお勧めします。また、新たにお住まいを建築する場合で、その敷地が軟弱な地盤や液状化しやすい地盤なのであれば、住宅用の免震工法や液状化対策の活用なども考えてみると良いでしょう。
 そして、定期的なメンテナンスが大切です。基礎や土台の状態を定期的に点検するだけでなく、普段から風通しを良くしておくなど、湿気がこもらないよう注意することがポイントです。普段は目に見えない場所なだけに、意識的な点検・注意が必要です。

鉄筋コンクリート造の建物

阪神・淡路大震災では、鉄筋コンクリート造の建物も1階部分が潰れたものが多く見られた。

“壁”が住まいの倒壊を防ぐ

先日、通勤電車の中で、「住宅で一番大きな面積を占めるのは壁である」というような内容の吊広告を目にしました。それを見て、「あぁそうだよなぁ。壁が一番大きいんだよなぁ。」と改めて気付かされた思いがしましたが、よく考えてみれば、日本の古来の住まいは逆に壁は少なかったはずです。柱と梁で構成され、間仕切りはふすまや障子などの建具が使われていました。それが、いつの頃からか壁が一番大きな面積を占めるようになったのです。
 そのような変化が起きた理由はいろいろあるのでしょうが、防災もそのひとつです。柱と梁だけの構造は、一般に横からの力に対して歪みやすいものです。間仕切りとして入れられている建具だけではその歪みに耐えられないため、所々に筋かいを入れたり、構造用合板を貼り付けたりして補強します。それが壁になります。壁は、単純に考えれば、多ければ多いほど建物は歪みにくくなり、地震の揺れにも強くなります。
 すなわち、現在の住まいの耐震性には、壁が大きな役割を担っているのです。だから、「住宅で一番大きな面積を占めるのは壁である」ということになったのでしょう。古い木造住宅の耐震補強も同じ考え方で行われます。木造だけでなく、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物にも、多かれ少なかれ同じことが言えます。

図

柱と梁だけでは歪みやすい

図

筋かいを入れると歪みにくくなる

鉄筋コンクリート造の建物

鉄筋コンクリート造の建物も壁が足りない場合には、鉄骨の筋交い(ブレース)を入れて補強します。

“壁”は火災の拡大も抑える

壁はまた、火災の拡大を防ぐという面でも大きな役割を担っています。
 最近の住まいは、壁の素材に石膏ボードやALCパネルなど燃えにくい素材を使用し、壁自体を燃えにくくしています。室内で火災が発生しても、その火は壁に阻まれて室外には広がりにくく、建物全体が一気に燃え上がるということはありません。隣の家の火災に対しても、外壁に燃えにくい素材を使うことで室内に火を入れないようにしています。
 このような技術を駆使すれば、木造であっても、火炎に1時間以上晒されても燃えない住宅もできますし、現実にそのような住宅も既に建設されています。また、古い木造住宅の耐震補強を行う際に、上記のような燃えにくい素材を使って壁を増設することで、新築の住宅にも近いような火災への強さが得られるような技術も開発され始めています。

“壁”の効果を最大限に発揮するために

以上のような壁の効果を十分に得るためには、いくつか気をつけなければならないポイントがあります。最後に、その主なポイントをご紹介します。

  • 壁をバランスよく配置する
    地震の揺れに対して、建物全体が均等な強さを持っていないと、弱い部分に力が集中してその部分が壊れやすくなります。建物全体にわたってバランスよく壁を配置し、壁の量に片寄りをつくらないことが大切です。
  • 併せて、窓やドアなどの開口部の強化も必要
    これは特に火災について言えることですが、壁がいくら火に強くても、そこに開けられた窓やドアが弱ければ、そこを伝って火は室内外へ広がってしまいます。また、窓ガラスが割れて散乱すると、人的被害につながる可能性もあります。ペアガラスや網入ガラスなど、揺れや火災でも割れにくく、割れてもガラスが飛散しにくい窓にしたり、ドアにも燃えにくい素材を使用するなど、壁の強化と併せて開口部の強化を考えることも大切です。
  • 地震の揺れを想定した壁の強化
    せっかくの壁であっても、地震の揺れなどによって筋交いが外れてしまったり、ボードやパネルが剥落してしまっては元も子もありません。揺れに対する強さが損なわれるばかりか、下の写真のように外壁が剥落して内部の木材が剥き出しになった建物は、火災に対する強さ(着火のしやすさ)は古い木造の建物と同じです。地震の揺れなども考慮しながら壁の強化を図る必要があります。
  • 専門家へ相談しよう
    木造住宅の壁の強さは、釘やビス、金具類の使い方ひとつで、大きく変わると言われています。木構造を専門とする研究者から、強いビスで止めた硬いボードは、地震時にはビスの強さに負けて割れてしまうが、柔らかい釘で止めた場合には、釘が曲がりながら揺れの力を吸収してくれるので、ボードは割れずに火災を防いでくれるという話を聞いたこともあります。

木構造の専門家は全国的にも少ないようですが、現在のお住まいの耐震改修を考える場合や、お住まいの新築を考える場合などには、市役所などを通じて専門家を紹介してもらい、詳しい相談に乗ってもらうと良いでしょう。

地震の揺れで外装が剥落し、内装の木材が剥き出しになった鉄骨造の建物。これでは、着火のしやすさは、古い木造建物と同じになってしまう。

今回は、住まいの安全対策のポイントとして、地盤、基礎・土台、壁について紹介しました。次回は引き続き、屋根、部屋、設備などについて紹介します。

【かみや・ひでみ】

螢泪姪垰垠築研究所 取締役・上席主任研究員

螢泪姪垰垠築研究所に入社以来、一貫して地震防災や防災まちづくり関連の調査・計画業務に従事。地域コミュニティに根ざした「防災」や「まちづくり」を旨とし、近年はGISによるシミュレーション技術などを活用しながら、地域住民による防災まちづくりへの支援などに取り組んでいる。