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住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

防災に強い住まいづくり
〜住まいの安全対策のポイント ②〜

螢泪姪垰垠築研究所 取締役・上席主任研究員 神谷 秀美

前回に引き続き、大地震などの災害時に少しでも被害を減らし、被災後も住み続けられるような住まいづくりや、現在のお住まいの点検のポイントをご紹介します。

軽くて火をもらいにくい“屋根”が理想

江戸時代の浮世絵などで、板葺きの屋根に大きな石をいくつも載せている建物が描かれているのを目にすることがあります。これは、台風などの強風で建物が飛ばされないようにする昔の人の工夫です。現在の日本では、さすがに屋根に石を載せた住まいは見られませんが、瓦の下に土を葺くなどして屋根を重くし、台風に備えている住まいは少なくないようです。
 しかし、その屋根の重さが地震時には逆に災いし、住まいを壊れやすくしてしまいます。

新潟県中越地震で被災した住宅写真

新潟県中越地震で被災した住宅。豪雪に備えて屋根を頑丈に作っていたが、その重さに対して壁量が足りず、築数年にも関わらず被災してしまった。

現在は、住まいの基礎・土台から柱・梁・屋根まで、金具でしっかり固定することができます。ですから、基礎や土台をしっかりつくっておけば、屋根が軽くても風で住まいが飛ばされる心配はありません。台風だけではなく、地震にも強い住まいにするためには、屋根を必要以上に重くしない、ということにも留意する必要があります。現在の住まいの耐震改修を行う場合にも、屋根を軽くすれば壁の補強は少なくでき、壁が多くて使いづらい住まいにしなくても済むようになります。

また、屋根には火災に対する配慮も必要です。もし、隣家で火災があれば、屋根の上には火の粉が降り注ぎ、軒裏は炎や高熱に晒されます。そのため、戸建て住宅の場合には、火災は屋根、特に軒裏を伝って燃え広がることが多いようです。
 屋根は、軽くすると同時に軒裏も含めて燃えにくい素材や構造にすることも、災害に強い住まいのひとつの条件と言えるでしょう。

住まいや暮らしをより安全にするための更なる工夫

大地震などに備えた住まいの安全対策の基本的なポイントは、前回ご紹介した分も含めて、だいたい以上のようなところだと思いますが、この他にも、住まいや暮らしをより安全にするための様々なアイディアが考えられています。以下に、そのいくつかをご紹介します。

“避難部屋”という発想

近年、大地震に備えて古くなった住まいの耐震改修の必要性が強く言われていますが、住まいの耐震改修を行うには、一般に百万円〜数百万円の費用がかかりますし、工事中は不便な生活を強いられる可能性もあります。もっと手軽でローコストな安全対策の方法はないものかと思われる方もいらっしゃるでしょう。

そのような要望に応えて、最近は様々な耐震改修の方法も考案されており、その中でも注目されつつあるのが、避難部屋(シェルター)の考え方です。具体的には、居間や食堂、寝室など一部の部屋を集中的に強化し、できるだけ家具を置かない、あるいは家具を作り付けにしてくことで、家の中に、いざという時に逃げ込める安全な空間を確保しておくという考え方です。大地震時に自宅が被災したとしても、避難部屋だけはつぶれることはなく、そこに逃げ込んだ家族の安全が守られるというわけです。

数日間で設置可能な“耐震シェルター”(価格は数十万円〜百万円くらい)という製品もいくつか開発されており、その設置費用を助成してくれる自治体も見られます。高齢者や障がい者などがいらっしゃる家庭などでは、一考の価値があると思います。

“環境共生住宅”は防災にも強い

大地震時に心配なのは、住まいが壊れることだけではありません。住まいは壊れなくとも、日々の暮らしを支えている水道や電気、ガス、通信などのライフラインが停止すると、日々の生活はたいへん困難になってしまいます。その対策として、一般的には、水や非常食の備蓄、懐中電灯やカセットコンロ、携帯ラジオなどの準備の必要性が言われています。これは、日々の暮らしに最低限必要な機能のバックアップを用意しておこうということですが、改めてバックアップ機能を用意しなくても、元々その一部を備えている住宅があります。それが“環境共生住宅”です。

家庭用の雨水タンクの写真

家庭用の雨水タンク。自宅の屋根に降った雨水を貯めておき、いざという時に備えます。

例えば、雨水を貯留して生活用水として使用できる住宅では、断水してもしばらくは貯留水が使えますし、雨が降ればまた水が貯まります。ソーラー住宅では、停電しても日照さえ得られれば被災程度の生活を支える程度の電気であれば確保できそうです。

また、環境共生とは直接関係ありませんが、マンションの場合、受水槽の有無が地震時の暮らしに大きな影響を及ぼしそうです。受水槽とは、水道供給を安定させるために、マンション内の各住戸へ供給する水道水を一時的に貯めておく容器のことで、常に一定量の水が蓄えられています。最近のマンションには建設費や維持管理費を減らすために受水層を設けず、水道管から直接各住戸に水を供給する方式をとっているものも多いと聞きますが、受水層があり、しかもそれが耐震化されていれば、大地震時にもしばらく飲料水に困ることはありません。

外構にも気を使おう

最後に、建物を離れて、敷地周りの外構づくりのポイントをご紹介します。

大地震時に、ブロック塀が倒壊して道を塞いだり、通行人に被害を及ぼしたという話を聞いたことがある方は少なくないと思います。建物がいくら強くても、その周りの塀などが壊れやすければ、周囲に迷惑を掛けるというだけではなく、自宅から避難しなければならないという時に、自らの避難路も塞いでしまうことになりかねません。そのようなことにならないよう、敷地周りの外構づくりにも気を使うことが大切です。

防災に強い外構のポイントは、転倒しにくいこと、そして燃えにくいことです。防災に配慮した外構の例としては、アルミなど軽い素材のフェンスや、逆に鉄筋コンクリートでがっしりと作った塀などがあげられますが、何と言っても代表例は生け垣です。

樹木は地面にしっかりと根を張ってしまえば、大地震時にも地面が崩れない限り転倒しませんし、生きている木は火災にも非常に強いものです。
 樹木の耐火力は樹種によって異なりますが、生きている木を燃やす(発火させる)ために必要な熱量は1万2千kcal/峪以上と言われています。木材の場合は4千kcal/峪程度ですから、生きている木は、木材の3倍は熱に強いと言えるでしょう。住宅が燃えても、その周囲の樹木はなかなか燃えずに、火災の熱を遮ってくれます。
 また、樹木は落下物なども防いでくれます。阪神・淡路大震災では、倒壊した家屋が道路を塞ぐのを防いだ生垣や、折れた電柱を支えていた木なども見られました。

倒壊した家屋の写真

阪神・淡路大震災では、生垣が倒壊した家屋を支えている光景も見られました。

生垣と併せて、庭木なども植えておけば、防災に強く、景観や環境にもやさしい住まいとなるでしょう。食べられる実がなる木などを植えておけば、災害時のちょっとした非常食にもなるかもしれません。

一方、生垣は手入れに手間がかかるため嫌う方もいらっしゃると思います。しかし、樹種によってはそれほど手がかからないものもあるようです。手入れなどが心配な方は、身近な造園やガーデニングの専門家に相談してみると良いでしょう。

さて、3回にわたって防災に強い住まいづくりですがその必要性や考え方、住まいの安全対策のポイントについてご紹介してきましたが、災害の逼迫性が強く言われている昨今、様々なアイディアや行政による支援策もたくさん見られるようになってきました。
 これから住まいを建てよう、購入しようと考えている方は、住まいの間取りやデザイン、設備の良さだけではなく、是非、以上のようなポイントもチェックしながら、住まい選びをされることをお勧めします。
 また、当面は新たな住まいを建てたり、購入する予定はないという方も、現在のお住まいについて以上のようなポイントをチェックし、気になる点があるようでしたら、自治体の相談窓口や身近な専門家に相談してみるとよいでしょう。そして、必要に応じて、現在のお住まいの耐震診断や耐震改修を考えてみることをお勧めします。

【かみや・ひでみ】

螢泪姪垰垠築研究所 取締役・上席主任研究員

螢泪姪垰垠築研究所に入社以来、一貫して地震防災や防災まちづくり関連の調査・計画業務に従事。地域コミュニティに根ざした「防災」や「まちづくり」を旨とし、近年はGISによるシミュレーション技術などを活用しながら、地域住民による防災まちづくりへの支援などに取り組んでいる。

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