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住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

本当に住みやすい間取りのヒント

住宅コメンテーター/有限会社エムエイチスリー代表取締役
元『住宅情報スタイル首都圏版』『都心に住む』編集長

坂根 康裕

もしあなたが「住んでみたい理想の間取りは?」と聞かれたら何と答えるでしょう?
 おそらく「○(部屋数)LDK」と答える方が大半ではないでしょうか。

とかく家選びというものは、予算と立地に翻弄されます。購入資金は十分か、月々のローン返済は無理の無い範囲で収まりそうか、通勤時間はどれくらいかかるのか、環境は良いか、資産性は大丈夫かと予算と立地を絞り込む過程には、チェックしなければいけないことが山ほどあります。そのため、希望の間取りについてはとことんイメージを深掘りしきれていないのでは、と思えてなりません。

実際、マンションを購入した人にその住み心地の満足度を伺うと、失敗や後悔の念をお持ちの人がとても多いことに驚かされます。そして、その最たる理由が“思ったより狭かった”という間取りに関連するものです。意外とお金や立地関連の事柄はそれほど上位にありません。これは検討段階で費やした時間と内容に関係があると私は思っています。

では“狭かった”具体的な内容とはどんなものかというと、

  • ・収納が足りない
  • ・家具が置けない
  • ・人の動線が確保できない

といった類のもの。やはりこれは、○(部屋数)LDKあるいは専有面積の屬覆鼻⊃字だけにとらわれるあまり起こった現象と考えられます。

なかでも、収納に対する不満が圧倒的に多く、ランキングにすれば不動の1位という表現がぴったりなほどで、よほど収納対策は考慮しておくべきといえそうです。

たしかに現代人はじつにたくさんのモノを所有しています。衣類、靴、書籍、食器、AV機器…。衣が自己表現の一端を担い、食が現代人共通のこだわりだとするなら、一口にモノといっても、所持品こそがその人の人生の軌跡だと言い換えても良いでしょう。読書ラインナップなどもオーナーの人となりが垣間見えるとも言います。これからはシンプルライフだなどというキーワードも耳にしますが、新居への引越しの機会に思い切って処分ができる人は、現実にはあまり多くないようです。

減らせないのであれば、それらが収まるサイズの収納が当然必要になってきます。小さいものは工夫次第で何とかなることもありますが、衣類や食器など日常使うものは取り出しやすい置き場が必要です。備え付けの収納以外に箪笥や棚を購入し、部屋やキッチンに置こうものなら、それこそ一気に手狭な空間になってしまうでしょう。ベッドやダイニングテーブルの配置にも影響しかねません。つまり、収納の問題は居室など生活空間そのものに多大な影響を与えるのです。そこをまず認識しましょう。全体の㎡数だけで物件を絞り込んでしまうことの無いように。ここは重要なポイントです。

同じことが居室の畳数においても言えます。主寝室は最低6畳だとか、子供部屋は4畳半でも何とかできるか、など数字だけ追っていては過ちを起こしかねません。夫婦のベッドが並べて置けなかったり、勉強机の椅子が引けないといったことが起こりうるからです。居室の場合、畳数と同じくらい部屋の形状(カタチ)が重要になるのです。

つまり、必要な場所に必要な容量の収納があるか、居室は置きたい家具が置きやすい形か、そこを入念にチェックしておくことです。

さらに、動線にも配慮したいものです。家事など日常使いのイメージを考えることはあっても、家族のコミュニケーションを念頭に吟味する人はまだまだ少ないような気がします。乳幼児がいればキッチンからの視界がひらけているほうが良く、思春期ならパソコンスペースはパブリックゾーンに、さらに居室から玄関の間にLDがあれば自然とお互いの顔を見ることができます。立派な大画面の薄型テレビを手に入れても、子供が帰宅して自室にこもりっきりでは団欒のリビング空間とは言えそうにありません。

家に存在するモノは住む人の人となりの一端であり、動線は家族のコミュニケーションの潤滑油になりえるものです。つまり、総じて間取りを検討するということは、自分や家族の生活そのものを考えることでもあるのです。

寝食ともに畳和室暮らしの長かった日本人にとって、洋間使いの歴史はまだまだ始まったばかりです。
 間取りの見方に関して、まだまだ初心者なんだという気持ちで十分に吟味する機会を用意しておくことが満足のいく住まい選びの一歩なのです。

キッチンは中心に、オープンに  がトレンド。理想の間取りは時代によっても移り変わる(photo:高田洋三)

【さかね・やすひろ】

住宅コメンテーター/有限会社エムエイチスリー代表取締役
元『住宅情報スタイル首都圏版』『都心に住む』編集長

1987年株式会社リクルート入社。94年より住宅情報事業部に従事、05年独立。現在、有限会社エムエイチスリー代表取締役のほかに、
株式会社ディア・ライフ(東証マザーズ) 監査役
All About「高級マンション」ガイド
「マンション評価ナビ」 評価委員

著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)

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