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トラブルへの対処

構造設計一級建築士  関  洋之
((社)日本建築家協会・関東甲信越支部 首都圏建築相談室)

写真:関洋之

私たち建築家は、常日頃の建築の設計や監理の中で、様々なトラブルに遭遇しています。そのせいか、いつの間にか多少のトラブルには慣れてしまって、それを淡々と処理することが身についてしまっているようです。 このため時には建築相談で市民からの相談を受けていて、なぜそんな些細なことに大騒ぎするのかと内心思うこともあります。もっとも相談者にとってみれば一大事と思って相談に来ているわけですから、そのような気持ちで対応してはいけないのでしょうが、中には目的や手段が混乱していて、解決への道から大きく外れてしまっている例も見受けられます。

建築相談の本来の目的は、現在遭遇しているトラブルを解決し、元の平穏な生活やより良い生活を得ることにあるはずです。ところが…、

 

最初はちょっとしたトラブルに過ぎなかったのに、
それがきっかけで相手に不信感を抱き、
いろいろな人に相談していくうちに更に訳が分らなくなり、
自分で調べていくうちに思い込みが激しくなり、
更にそれが原因で身内とも気まずくなり、
なぜこんなに自分が苦しまねばならないのかと腹を立て、
いつの間にか誰かを訴えて損害賠償を勝ち取ることが目的になり、
平穏な生活から遥かに遠いところをさまよい続ける・・・、

といった悲惨な状況に陥ってしまう場合も実際にあるのです。いずれにせよトラブルを解決していくためには、関係者が冷静になって解決策を模索していかざるを得ません。そのためには、次のような順序で対応していくことが大切です。

現象の確認→原因の調査→対策の立案→対策の実行

・現象の確認

例えば相談に来て、最初から「フローリングの床にピンポン球を置いたら転がった!床が傾いているに違いない!欠陥住宅だ!損害賠償を!」と大騒ぎする方もいます。欠陥住宅の見分け方をテレビ番組で見てやってみたそうです。でもそれまでは何の問題も無く暮らしていた訳で、突然不便になった訳でもありません。住宅は工場の精密加工機ではなく大工さんが作るものですから、多少の不陸はあります。もしフローリングの上にカーペットが敷いてあればピンポン球は転がらなかったかもしれません。まずそれが本当に対策を必要とする程度の欠陥なのか、冷静に考えてみることが必要です。
 つぎに確かに床が傾いていたとしたら、その傾向を確認することです。床が部屋の中央に向かって下がっている場合と、一方向に下がっている場合では、原因が異なることがあります。

・原因の調査

部屋の中央が下がっている場合、床を支える梁の大きさが足りなくて撓んでいることが考えられます。この場合、梁の耐力と硬さが不足しているので、床が振動したりミシミシ音がすることもあります。梁の大きさが十分か専門家に見てもらいましょう。
 一方向に下がっている場合、家全体が傾いていることも考えられ、軟弱な地盤による基礎の不等沈下が原因かもしれません。基礎の表面を観察してみましょう。コンクリートにひび割れが生じているかもしれません。これも専門家に調査してもらう必要があります。
 その他の原因として、大工の技量不足というのもありますが・・・、最近は優秀な職人が減っているそうで、ダイクになれないダイハチやダイナナもいるそうで・・・。

・対策の立案

原因が分かればそれに応じた対策が立てられます。梁の耐力不足であれば軽量鉄骨等でその梁を補強する、新たな梁を追加する、また使用上支障がなければ下に柱を追加する等です。
 基礎の問題であれば、沈下した部分をジャッキアップして基礎下に杭を追加する、地盤改良する等です。

・対策の実行

どの対策を実行するかは、その効果や施工性、費用等を総合的に判断して実行することになります。その際、費用を誰が負担するのか、責任の問題も含めて交渉が必要になります。これにも第三者としての専門家(建築家や弁護士等)の力を借りることになります。

 

以上がトラブルへの対処の流れになります。自分だけで勝手な判断をしないで、専門家の意見を聞きながら進めていくことが大切です。

 

【せき・ひろゆき】

構造設計一級建築士 JIA登録建築家 JSCA建築構造士 APECエンジニア(構造工学)

日本建築家協会(JIA)会員 関東甲信越支部首都圏建築相談室員
日本建築構造技術者協会(JSCA)会員
日本建築学会(AIJ)会員
日本モデルロケット協会会員
日本宇宙エレベーター協会会員

« お問い合わせ »
社団法人日本建築家協会  首都圏建築相談室
TEL : 03-3408-8293  FAX : 03-3408-7129  担当:馬場

※ 今年度3月までのこのコーナーは、日本建築家協会の建築相談を担当している建築家の方々からご意見やご提言を掲載する予定です。

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