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住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

Artと暮らす・・・心やすらぐ新空間

Art書家 本田 蒼風

本田蒼風

「お母さん、ただいま〜」
トントン・・・トントン…(包丁の音)
「お帰り。今日幼稚園どうだった?」
「楽しかったよ、でもね○○ちゃんがね…」

私の家は、父・母・妹・そして私の4人家族。
父は教師でもあり、書道家でもありましたので、2階のアトリエ風の父の部屋からは、いつも墨独特のいい香りがしていました。玄関を抜けると小さな居間があり、台所で母が御飯の用意をしていました。

味噌のいい香り…

妹はいつも母の横にはりついて離れませんでした。「(今日もお母さんにはりついてる…)」

いつもの会話、いつもの光景、いつもの香り。
幼い頃の私の記憶。家にはそこにしかない特別な「いつもの」がありました。
そしてそんな「いつもの」香りや光景たちに迎えられると、
不思議なほどにほっと落ち着く感覚だったことを今でも思い出します。

私にとっての家(住まい)は、「どこよりも心から安心できる場所」でした。
「元気をもらえる」不思議な空間でした。
でも、そのことに本当の意味で気がついたのは、その空間(実家)から離れ東京で一人暮らしを始めてからでした。

就職が東京に決まり、22年間住み慣れた北海道から東京へ
引っ越すことになりました。
上京と同時に始まった一人暮らし。
帰ったら真っ暗な部屋。
冷え切ったワンルームには、自分以外はいません。
まだ色々と買い揃えられていない空間は、ただガランとしていました。

「あれ、家ってこんなに寂しいところだったかな。」

まだ知り合いがほとんどいなかった当時、そのガランとした部屋は、家好きの私でさえ居心地の悪い寂しい空間でした。

新しい環境、新しい生活。
何度も心が折れそうになりました。
一時は何にもやる気が起きなくなってしまったこともありました。
そんな時期が続いたある休みの日。
外に出る気力もなく、TVも見飽きてぼーっとしていました。
ケータイには北海道の母からの「元気でやってるの?」のメール。
心配をかけまいとして「毎日楽しいよ」と返す私。
泣くのも悔しくて、心とは裏腹に、元気に振舞っている私がいました。

そんな状態で、ふと手にしたのが2歳の頃から握っている「筆」でした。
特に何を書こうと考えることもなく、ただただ筆で半紙に思いついた漢字一文字をどんどん書いていきました。

「陽」「女」「心」「楽」「笑」「福」…

散々書いた後、最後にぽろっと書いた一文字が
「辛」

その無意識にでた「辛(い)」の一文字が、自分でも驚くほど辛そうで、貧弱で、切ない表情で…
「あっ、これが今の自分か…」
と思ったら、あまりに言い当てられた気がして涙を流しながら大笑いしました。

それからというもの、私は自分の気持ちを筆に載せて表現できることの楽しさを再確認し、
そのときの気持ちに合わせて文字を選び、身近におくようになったのでした。

少しずつ元気を取り戻し始めた私は「こうなりたい」「こうなれたらいいな」と思う気持ちを、一文字書きの作品で表現するようになっていました。
そしてそれをいつも目につく場所にインテリアArtとしてちょっと可愛い額に入れて飾るようにしたのです。

元気がなくなっている時には元気の「気」を。
楽しく過ごしたいと思うときには「楽」を。
彼氏がほしいと思ったときには「男」を…笑

こうしていると、本当に不思議なことが起こり始めました。
そのとき選んだ文字のように過ごせている自分がいたのです。
これは超能力のような特別な力のせいではなくて、
毎日「楽しく過ごしたい」という思いを込めた「楽」の文字を目にする度に「あっ、私は今楽しく過ごしたいと思っているんだった」と思い出すきっかけになって、意識して過ごすようになったから…
元気の「気」を眺めては「最近疲れているかな、少し休もうかな」と元気にいるために生活スタイルを見直すきっかけになったから…

彼氏はそう簡単にはいきませんでしたが…(笑)

文字たちは私に気づきのきっかけをくれるものでした。
とっても単純なことですが、文字たちには驚くほど効果がありました。

「私のように文字を通して元気になれる人が一人でも増えてくれたら嬉しいな…」

そう思ったことがきっかけで、私は勤めていた会社を退職し、Art書家として独立することを決心したのでした。

私たちにとって、「いつもの」の安心感がいつまでも感じられる住まいや環境があればベストですが、家族の成長とともに生活リズムも変わり、なかなか「いつもの」をキープするのは難しくなってくるのが現実です。

そんなときに効果的なのが、「家族文字」をインテリアArtとして取り入れるという方法です。

インテリアArt書の作品依頼を受けて、一番初めに伺うことは
「家族がどうなってほしい、いつもどういう気持ちを大切にしたいという願いはありますか?」ということです。
文字の選定をする前に、まず家族会議(又は一人暮らしの方の場合、はその方に)で「こうありたい・なってほしい」を相談していただきます。

写真:玄関入って正面のスペース。
玄関入って正面のスペース。
「光」の古代文字をデザイン

それを伺ってからその思いを感じられる文字を決めていきます。
このお宅では「家族みんなが毎日元気に、そしてそれぞれの目標に向かって頑張ろう!!と思いながら過ごせるようになりたい」との答えが返ってきました。
そこで私が選んだ文字が「光」「生」でした。

「光」の漢字のルーツは「人が神聖な火(目標や願いを込めて焚くもの)をひざまづいて眺めている人の姿」からきており、「叶いますように…」という気持ちの表れから生まれた文字です。

そして「生」の文字のルーツは「植物が土から芽吹くときの生命力をあらわすため」にできた文字だといわれています。

 
写真:玄関入って正面のスペース。

この文字たちは、このご家族の気持ちを表すのにぴったりだと思い選ぶことになりました。

家族の思いが込められた文字たちを私は作品として書き上げるのですが、
ご家族は、家の中でこの文字たちを目にする度に、
「私たちはこれを目指しているんだ…頑張ろう」と思えるきっかけになるのです。

たとえそれぞれが忙しく過ごしていても、その文字を見る度に「家族」や「家族の目標を一緒に考えた時間」を感じ、心で家族を感じられる「いつもの安心できる空間」に一歩近づくのだと思います。

 

このほかにも、いつも見る洗面台のガラスには「笑(いつも笑顔でいられますように…)」と「美(いつも美しくありたい)(笑)」の文字も入れました。

住まいに安心感や居心地の良さを求めるとき、文字をインテリアArtとして取り入れることは、手軽にできるリフォームの一つだと思います。

「笑」の古代文字をArt書で表現 「美」の古代文字「美」の古代文字(拡大)
「笑」の古代文字をArt書で表現 「美」の古代文字
 

【インテリアArt書 事例】

「生」の文字が書かれたインテリアArt書ライト いい文字が入ったキャンドルホルダーで食卓を彩る
いい文字が入ったキャンドルホルダーで食卓を彩る
手軽に取り入れられるフレーム作品
「生」の文字が書かれたインテリアArt書ライト 手軽に取り入れられるフレーム作品
 

思いを込めて文字を選び、普段の生活に取り入れることでほんの少し、いつもより快適に過ごすことができるのです。

さあ、今あなたはどんな文字が必要ですか?

 

【ほんだ・そうふう】

Art書家

1981年北海道旭川市生まれ。
2歳より書をはじめ、幼少期は書を祖母、父に師事。
その才能は早くから評価され、数多くの展覧会に出展し、多くの受賞暦を持つ。
教育大学書道専攻へ進学。書を専門に学ぶ。
文字(漢字)のもつメッセージやルーツなど、文字本来がもつ魅力をデザインの要素を取り入れ表現をするArt書を主に創作し、文字の魅力を伝える為のイベントやパフォーマンスなど様々な方面で活躍。
文字をもっと身近に感じてもらえるよう立ち上げた本田蒼風オリジナルブランド「MOJIKARA」も運営、Art書の新たな可能性を提案している。
Art書レッスンやイベントの様子は読売新聞文化面、朝日新聞文化面、東京FMなどでも紹介され、文字の魅力を伝える書家として注目を集めている。

【公式サイト】
言霊工房 蒼風オフィシャルサイト(http://www.honda-soufu.com/)
本田蒼風オリジナルブランド MOJIKARA(http://www.mojikara.com)

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