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住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

ワクワクするような質の高い空間作り
〜海外と日本の住宅事情〜

一級建築士 吉崎 亜子

吉崎 亜子

住宅に関する考え方は欧米と日本では様々な点で異なっています。イギリスとアメリカでの生活を通じて強く印象づけられました。私がインテリアを学ぶために最初に留学したのはロンドンから鉄道で30分ぐらい南に下った緑の多い静かな街でした。多くの人々がロンドンの中心部に通勤していました。ロンドンも緑は多く住みやすい環境が整っていますが、イギリス人にとっては郊外の自然の豊かなところに家を持ち、都心に通勤するというのが理想のようです。自然豊かな場所で、家族とゆっくり過ごし、週末はガーデニングや日曜大工にいそしむのが最も大事なことなのでしょう。帰宅時間は早く、夕食は家族そろって食べるのが当たり前です。父親も時間に余裕があり、家事や子育てに参加します。

私がホームステイした先は、庭つきの一戸建の5LDKでリビング・ダイニング・キッチンは独立し、それぞれ10帖ほどもある大きな家でした。家族は5人、30代の両親と3歳、5歳、10歳の3人の男の子のいるにぎやかな家庭でした。
 「この家は築100年以上たっていて、ビクトリア時代に建てられたんだ。すごいだろ。」とご主人が誇らしげに話してくれたことを思い出します。その時私の頭の中では、100年前に建てられた?という感じでした。なにせ日本では、築30年といえば、そうとうに古い家ですね。と考えるのが一般的ですから。
 もちろん木造と石では根本的に構造が違いますし、天候や文化も違いますから簡単に比較はできませんが、古いということがアンティークのようなひとつの価値になっているのです。その時に家に対する価値観の違いに驚きました。100年以上経っているその家は、最初こそ床が抜けているような状態でしたが、自分たちで徐々に改修しキレイな状態にしたそうです。初めは1階を修繕しながら生活し、少しずつ2階まで改修していったという話しでした。

自分達自身でリフォームの工事をするのは決してまれなことではないようです。現に知り合いの30代の夫婦の家も、エンジニアのご主人が毎週末コツコツと家をリフォームし、奥さんのコーディネイトで素敵な家を造り上げていました。床を貼ったり、壁を塗り替えたり、石を貼ったりというような手間のかかることを地道にやっていくのです。さらにD・I・Y専門のテレビ番組もあり、その手の本も豊富で、環境が整っていました。一度家に遊びに行った時など作業着をきたご主人が地下の倉庫からひょっこりと顔をだして挨拶したということもありました。日曜大工が生活の一部となっているという感じでした。

自分たちでリフォームし、買った時よりも高く家を売り、次にもう少し大きな家というようにだんだんと資産を増やしながら住みかえていくということがあたりまえのようになされていました。住み手のセンスと努力が家の価値を上げていくとうのは、なんともすばらしいことではないでしょうか?日本では建物の価値は時がたつほど上がっていくことはまずありませんが、100年住宅というようなことも最近では言われてきて、徐々に日本の住宅に対する考え方も変化してきています。将来的には、新築だけに高い価値をおくのではなくきちんと手入れの行き届いた品質のいい中古住宅にも価値がみいだされるようになるのではないかと思います。日本の住宅も欧米のように何回も改修して転売することがあたりまえとなり住宅のクオリティもおのずとあがっていくことを願います。

ホームパーティが数多くあり、近くの教会に行けば必ずといっていいほどどなたかに夕食に誘われ、自然と欧米の家の中を見る機会に恵まれました。
 家がその人となりを語るという感じでしょうか、家々に個性があり独自のセンスでいろどられて新鮮な印象を受けたのを覚えています。家の中のコーディネイトはたいていの場合、女性の重要な仕事のひとつとなっています。経済的に余裕があり、こだわりのある人たちはインテリアデザイナーや建築家に依頼します。日本でも、インテリアにこだわりのある方が増えています。最近では商業施設のみならず、一般の方からのインテリアに関する依頼も受けるようになってきました。新築やリフォームの際にはプロの手を借りていくということも賢い選択だと思います。

イギリスと同様に、古い建物を大切にするということについていえば、アメリカも東海岸では同様で新しい建物を建てることがなかなかできません。ニューヨークなどは、特に建物の外観を変えることが法律で規制されています。レストランやショップでも内装をそのお店独特のデザインに変えることで独自性をだしています。外観は、石造りの伝統的建物でも一歩店内に足を踏み入れると超モダンなインテリアということもよくあります。そのギャップが人々の心に強く印象に残り、ドアを開けた時の感動をつくりだします。そのためデザインが重要になってくるのです。そこが建築家・インテリアデザイナーの腕の見せどころというわけです。

私がデザインをする時に心がけていることは、住宅の内装デザインにもお店のデザインをある部分取り入れることで非日常の空間をつくりあげることです。その日常の中の洗練された部分が住宅全体を引き締め、日常生活に遊びの要素をプラスします。逆にお店には、住宅の要素を少し取り入れてあげることでお店の中にリビングのようなくつろぎ感をだすことができます。その洗練された非日常的な空間のなかのやすらぎによって、お客様が気軽に足を運んで頂けるようなお店になります。

たとえば、ショップは、かなり凝ったライティングプラン(照明計画)をしています。住宅は、まだ部屋にひとつ天井から照らす照明だけという家もおおいのではないでしょうか?間接照明を少し加えてあげるだけで空間に各段の違いがでてきます。ちょっとしたことで空間に広がりや陰影を作りだせる。あかりを工夫することによって生活を豊かなものに変化させることができるのです。

欧米に行くと感じる光のやわらかさやあたたかさは、白熱球を主に使い、間接的な照明を複数使うことで部屋に立体感をあたえることでつくられています。 今時代はエコですから、電気は、白熱球から蛍光灯に切り替わりつつあります。蛍光灯もどんどん進化していていろいろなものがでてきています。蛍光灯でも電球色(白熱球)に近い暖色の電球がたくさんあります。また、調光の機能がついているものもあるのでリビングや寝室に取り入れてみてはいかがでしょうか?シチュエーションによって光を変えてみるのもなかなかいいものです。

インテリアは、照明計画・動線計画・使用材料・什器(家具)・色など多義にわたっています。ひとつの空間の中でこれらすべてを統一させ、いごこちのいい空間とするためには調和が必要となります。機能をそなえつつ、調和のある空間を作り出すということは意外とむずかしいものです。最初の構想段階からデザイナー・建築家に相談していくことは、結果的により満足度、完成度の高い空間づくりにつながっていきます。最終的には欧米のように、手間と時間をかけリフォームしてきた家に人々が価値を見いだし、その結果として資産価値もあがっていくことが住宅の理想的なかたちだと思うのです。

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【よしざき・あこ】

イギリス、ニューヨーク(ニューヨーク州立大学F・I・T)にてインテリアデザインを学ぶ
ロサンゼルスのアトリエ系建築事務所勤務後帰国
(株)丹青インテグレイテッド デザインスタジオ
(株)フレスコを経て
2003年 Atelier Y 設立
2007年 株式会社 アトリエワイ・プラス へ

【公式サイト】
Atelier Y +(アトリエワイプラス)