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住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

このコーナーでは、各界の有識者の方々による「住まい」に関する様々なご意見・ご提言等を紹介しています。(なお、ここに掲載している内容は筆者の個人的見解であり、当協会としての意見ではありません。)

「シンプル平家ひらやスタイルの家」

一級建築士 インテリアコーディネーター 大塚あや

写真:大塚あや氏

"space33 一級建築士事務所が提案する理想の住まいづくり case study-01"

■ プロローグ

家づくりをお考えになっているお客さまと初めてお会いする時のわくわく感や初めて土地を訪れる時の高揚感は、格別なものです。うちの事務所に訪れるファミリーは、最近、小さなお子さんがいらっしゃる30歳代前半のご夫婦が多いように感じます。いわゆる第一次取得層ですが、区画整理された造成地の30坪程度に分筆された土地を購入されてやってくるケースがほとんどです。
その中に容積目一杯、なおかつローコストで建てたい、と皆さん考えます。
まずご予算から、どのくらいの規模のもの、仕様のものが建てられるか等も含め、一案提案させていただきます。その際、お客さまとの何気ない会話、土地を訪れる時に感じるインスピレーションから空間をイメージし形にしていきます。このような状況では必然的に木造2階建て+ロフトというスタイルが主流になります。コスト的に木造になり、2階建てよりももう少し床面積が欲しい場合容積に参入されない規模でロフトをつくるのです。要するに、一層分の床面積が40〜50崢度でそれが二層に積み重なり、さらに小屋裏部分にロフトがのる形です。
以上のスタイルが最近の主流になっています。もちろん、それ以外の家づくりもしてきましたが、別荘等の例外を除くとたいていは2階建てで土地に対して目一杯建てたい、というケースがほとんどです。土地を手に入れ自分達の財産として家づくりを考えるわけですから、可能な限り最初からつくっておきたいと思われるのも当然だと思います。

■ 理想の住まい

これから私がご提案する「シンプル平家スタイルの家」は、土地60坪、建坪40坪で、60歳代のご夫婦がお仕事をリタイアされて都内のマンションから郊外へと居住地を移される、という想定のもとつくられた住宅です。もちろんこのケースで家づくりをお考えになる方もいらっしゃいますが、そうでないケース、例えば先述したような30歳代前半の若いファミリーの30坪程度の土地に家づくりをする場合でも応用がきくスタイルですので、一つの選択肢として参考にしていただけたらと思います。
この企画住宅は、二つの大きなコンセプトから成り立っています。一つは、「平家スタイル」であること。もう一つは、「エコ住宅」であることです。
まず、「平家スタイル」とはどんな住宅なのか、説明したいと思います。「平家」という言葉を聞いて、一般的にはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?「貧相」とか「小さい」という言葉もあがってくるかもしれません。日本の戦後のバラック住宅を想像される方も多いのではないでしょうか?
ここではまず、平家のメリットを挙げていきたいと思います。

  1. 1. ワンフロアーで生活が成り立つ為、利便性がある。
  2. 2. 接地部分が多い為、一戸建住宅の魅力を最大限生かせる。
  3. 3. シンプルな構造・設備計画ができるので、住宅の寿命が長い。又メンテナンス面でも有利である。
  4. 4. 2階建ての場合におこる季節によって生じる各階の温度差等の問題がない。

以上のような点が挙げられます。
この平家の特徴を最大限に生かし、現代の生活スタイルに合わせ計画したのが「平家スタイル」です。
又、このスタイルに二つ目のコンセプトである「エコ住宅」の要素を取り入れることで、より平家のメリットを活かせる計画になっています。

■ 平面図

次に平面図の説明をしたいと思います。下図がこの計画の平面図です。玄関までは、駐車スペースからスロープで上がっていきます。玄関の引き戸を開けるとすぐに、大きなデッキと大きな木を目にします。直接プライベートデッキと行き来出来るようになっていて、デッキは昔の住宅の土間のような役割も持っています。又この16帖の広さのデッキは、LDKとつながっていて外部の「くつろぎの場」となります。玄関には、人が中に入れる収納庫が隣接しています。靴や傘などの他、ゴルフバックやアウトドアグッズなどのように大きなものも収納出来ます。中に入ると右手がプライベートスペースである寝室で、左手がパブリックスペースのLDKです。正面にあるのはキッチンに隣接したパントリー。上部に2階部分までは高くならないレベルに和室スペースを設置したいため天井高さは1m70cmに抑えています。同じ天井高さのWIC(ウォークイン・クロゼット)が寝室に隣接しています。左手のパブリックスペースは、約32帖のワンルーム空間です。オープンキッチンはそのままそこで食事ができるようにテーブルと兼ねていて、背後にはIHコンロが設置されています。キッチンからも南側の大開口部よりデッキの大きな木が望めます。1.5層分の天井高さがあるLDKからは、ロフト感覚で上部に部屋が点在するのを確認できます。パントリーとWICの上部には和室(天井高さ2m10cm)が、寝室やサニタリーの上部にはロフト(天井高さ1m70cm)がのっています。サニタリー、WC、浴室はワンルームスペースになっていて、約6帖の広さで、そのまま洗濯干しデッキへとつながっていきます。プライベートデッキと分けることで、LDKから洗濯物が見えないメリットや動線がシンプルであるため、日常の家事の負担を最小限にすることが出来ます。
水廻り上部のロフトは3帖程度のデッキに面しているので、天気のよい日にはデッキに出てお昼寝、も気持ちいいでしょうね。

配置図兼平面図
配置図兼平面図
ロフト階平面図
ロフト階平面図
内観模型写真
1. 1階/玄関、WIシューズ、LDK、寝室、サニタリー、パントリー、WIC、プライベートデッキ
2. ロフト階/ロフト-1、ロフト-2、和室コーナー

浴室イメージ

外観イメージ

■エコロジー

次に二つ目のコンセプトである「エコ住宅」の説明をしたいと思います。
日本の家屋は、「夏を旨とする」といわれています。現在の住宅は、高気密・高断熱住宅が主流ですが、木造住宅は本来適度な通気性が自然にとれる構造です。南北に適当な開口部を設けることで通風を確保することが出来るので、夏は自然換気がメインでした。ところが、高気密・高断熱住宅では、適度な通風がとれず又窓を極力小さくする傾向がある為、エアコン等の動力換気に頼らなければなりません。
今回提案する「エコ住宅」の特徴は、大袈裟な設備を設置するものではなく、最小限の動力を使ってできるだけ自然の力を有効活用するシステムです。

外観模型写真
外観模型写真

上の模型の写真を見て下さい。屋根を緑化しているのが分かるかと思いますが、ほとんどメンテナンスの要らないコケ植物のシートを敷いています。これは、外壁にも設置出来る、イニシャルコスト的にも有利な簡易なものです。これにより夏の屋根面の温度が20度近く下がり、室温に影響を及ぼします。

又、南側に大きな開口部を設けていますが、夏の日ざしを遮る為にデッキには大きな木を植えています。落葉樹ですので日ざしを最大限に取り入れたい冬には葉が落ち、室内に日照を取り入れます。
冬の暖房対策は、基礎の蓄熱式輻射床工法で熱を蓄熱床にためることにより、一日中均一の室温を保つことが出来ます。オール電化とすることで、深夜電力を一日中利用することが出来、ランニングコストが抑えられます。
夏は南北の風の動きを利用して、南側の大開口部から外部の新鮮な空気を取り入れ、室内の暖まったよごれた空気を北側のハイサイトライトから逃します。適切な窓の配置計画で自然の力を最大限に引き出すことが出来るのです。

キッチンよりリビングを望む

キッチンよりリビングを望む

以上、エコの話をしましたが、この原理は上下で挟み込む構成なので、2階建の住宅よりも平家スタイルに向いています。

今回の提案型住宅は、よりシンプルに、そして無理をしない程度のエコを意識したい方にお勧めします。
ライフスタイルをもっとシンプルに、必要になった時に空間を増やしていく、という柔軟な考えのもとでスタートすることもできるスタイルです。最初から目一杯大きく、お金をかけて家づくりをすることが、当たり前の世の中ですが、自分達にとって必要なものを必要な時に選択していけるような、家族の成長と共に家も成長していくような、そんなスローライフ住宅があってもいいのではないかと思うのです。

【おおつか・あや】

1971年 横浜に生まれる
工学院大学工学部建築学科卒業

細田工務店・設計部にて木造住宅設計、街並プロジェクトに携わる
2005年 space33 一級建築士事務所 設立

使い込まれた道具のように・・・使い込んだ道具には、その人の身体の一部のように馴染んだ一体感が生じます。建築の場合でも住み手や使い道との関係のなかで時間をかけて居心地のよさが生まれる。そんな生活の器としての建築空間をつくり続けていきたいと考えています。

【公式サイト】
space33一級建築士事務所

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