• ホーム  >  
  • 住まいの情報(百・家・争・鳴)

住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

「居心地のいい住まい」の作り方 〜 動線と収納をセットで考える

一級建築士 水越美枝子

水越美枝子

住まいの3つの法則 「動線」「収納」「インテリア」

NHK出版から一昨年の秋に「設計の手法を盛り込んだ、やさしい住まいづくりの本を書いてみませんか。」というお話をいただいて書いた拙著、「40代からの住まいリセット術―人生が変わる家、3つの法則 」が、昨年の10月に出版されました。

住まいの3つの法則イメージ

内容は、「居心地のいい住まい」をつくる条件に欠かせない「動線」「収納」「インテリア」という家づくりの三要素を組み込んだ法則にインテリアの手法「フォーカルポイント」を加えて、わかりやすく解説しました。

住まいは動線と収納をうまく整えるとずいぶん暮らしやすくなります。無駄な動きが無くなって家事や身支度にかける時間が短縮できる上に、ものが自然に片付く、‘散らかりにくい家’になるからです。

image
M邸(アトリエサラ)

そしてその動線と収納がうまく組み合わさってできたくぼみにインテリアが安定して乗っている状態が、「居心地のいい住まい」をつくる条件だと考えています。
 家のなかの移動が少なくてすむ「短い動線」、短時間で片付く「適所適量の収納」、そして暮らしを楽しむ「自分らしいインテリア」の黄金のトライアングルが完成すると、「住み心地のよい家」が完成します。

家にいることで幸せを感じたり、住まいのおかげで活き活きとできる、そんな暮らしは確実に人生を豊かにします。
長い人生を豊かに自分らしく暮らすための「自分に合う生活ができる家」「居心地のいい住まい」を作る3つの法則

  • 法則① 短い動線
  • 法則② 適所適量の収納
  • 法則③ 自分らしいインテリア

のうち、この回では①動線と②収納についてお話しさせていただこうと思います。

収納は科学 【適所の法則 1 物の住所を決める】

オープンテラスの家(アトリエサラ)
オープンテラスの家(アトリエサラ)

収納の第一の原則は【適所】です。

リビング、ダイニング、キッチン、寝室、浴室、洗面所、玄関。部屋にはそれぞれに用途がありますが、それら各々の部屋ですることはだいたい決まっています。例えば、玄関での行動を考えてみると・・・、あたりまえですが靴の脱ぎ履きです。ですから玄関にあるもの、それは「靴」です。つまり、「靴」が収納される靴箱は、玄関が【適所】になります。玄関でする他のことも考えてみます。冬ともなればコートを脱ぎ着し、家の出入りには鍵も必要です。コートや鍵の収納場所も、実は玄関が【適所】ではないかとも思います。

このように、玄関での行動はどこのお宅でもあまり変わりませんが、アイロンがけをする場所はご家庭によって違ってくるかもしません。リビングやダイニングで行う方もいるでしょうし、家事室を設けている方もいるでしょう。その場合でも、「生活の行動に合わせた場所に物を置く」原則を忘れずにものの定位置を決めていくと、収納がシンプルになり片付く家になってきます。


image
M邸(アトリエサラ)

行動するエリアから、ものをしまう場所が遠くなるほど、片付けることにストレスを感じ、ものが散らかる原因にもなり家事効率も下がります。できるだけ使う場所の近くに「ものの住所(物をしまう場所)」を決めること、が鉄則です。

また、この考え方でいくと、小皿や箸、カトラリー類、湯のみ茶碗は、キッチンにある食器棚ではなく、ダイニングテーブルから近い収納が便利だとわかります。写真のキャビネットは引き出し式の食器入れで、テーブル側で使う、お皿やタンブラー、マグカップ、ナイフやフォーク、お箸、客用のお茶やコーヒーの茶碗、お酒を飲む時のおちょこなどを入れています。お弁当も冷ましておいてテーブルで包むので、お箸ケースや包むための大判のナプキンもこちらに入っています。座っている位置から近い場所に収納してあれば、家族に配膳を手伝ってもらう際もスムーズです。食事中、「もう一枚、小皿がほしい」とき、わざわざキッチンまで行かなくても取りだすことができます。

収納は科学【適量の法則 2 洗面所にはたっぷりの収納を】

インテリアを楽しむ家(アトリエサラ)
インテリアを楽しむ家(アトリエサラ)

新築でもリフォームでも、洗面所には奥行の浅い天井までの壁面収納を設けることにしています。切りのいい1尺(30.3僉吠の壁をへこませると、ちょうどいい収納スペースになります。ちょうどいい、というのは100円ショップの定番の収納かごの寸法とうまく合うので、棚の上の空間が分割しやすく、見た目もきれいだからです。
 洗面所には、タオルや浴室で使うもののストックだけでなく、下着やパジャマまであれば生活の動線の無駄もなくなります。

  • ・収納力アップのコツは棚の数を多めにして隙間をなくすこと。
  • ・収納量は棚数に比例する。

ということを念頭に置いてください。 そして、「引き出し収納の代用に、ぴったりサイズのかごを活用する」です。そして、洗面カウンターの上で使うもの(化粧道具やヘアケア用品、コンタクトとメガネなど…)も家族ごとにかごに入れておいて、「使ったらしまう」を守れば、いつも片付いている洗面所になります。


逗子の家(アトリエサラ)
逗子の家(アトリエサラ)

こうして洗面所のたっぷり収納を確保できれば、洗面台はカウンターのみでカウンター下はフリースペースにすることが可能です。カウンター下が空いていると何かと便利で、とても好評です。

写真の洗面カウンターは足元に洗面所や浴室の湿気対策に有効な、通風窓を設けています。ここを開けた時に少し離れた部屋やリビングの窓を開ければ、家の中の空気が流れ、効率よく家全体の換気ができます。
 また、カウンター下のフリースペースには脱衣かごや洗濯かごなどがすっきり入ります。椅子に腰をかけてお化粧をしたり、歯を磨いたりもできます。

通風窓があるので、臭いの気になるペット用品を置いている方。カウンターの下に1枚棚を設けてストック類やバケツなどを置いている方。それぞれの生活スタイルに添ったフレキシブルな使い方ができるのも、カウンター式洗面台の利点です。

このお宅では、吊りキャビネットをやめて、上部に明り取りの高窓をつけました。足元の窓と高窓で、プライバシーもさほど気になりません。

動線のスタート地点は洗面所

私が、設計する際に、洗面所の改善改革にこだわるのは、そこが、家族みんなの空間利用率の高い共有部分であり、思いのほかさまざまな生活行動をする場所で、心地よい住まいの出発点となるかどうかの鍵をにぎっているところだと考えているからです。

入浴のための着脱衣、洗濯、そのほかカウンターでは、歯磨き、手洗い、うがい、ドライヤーで髪を乾かす、髪の毛のセット、化粧、コンタクトレンズを着脱しめがねに掛け替える、切花を生ける、洗面ボールでセーターを洗う、などなど。いまや洗面所は、生活の質を変える、グルーミング(身だしなみを整える)空間になっているのです。そして、ここですることは、裸になったり、歯を磨いたりといった、きわめてパーソナルな行動です。このグルーミング空間が住まいのなかの適切な位置にあって、快適さを満たしていることも、快適な日常生活につながるのです。

住まいの工夫【動線と収納をセットで考える】

image
S邸(アトリエサラ)

次に、「ものの収納場所を変えることでも、動線を縮める事ができる。」というお話しです。
例えば、洗面所にタオルや浴室で使うもののストックだけでなく、下着やパジャマまであれば、お風呂に入る時にどこへも寄らずに洗面所へ直行できて、動線の無駄がなくなります。
 そこでもうひとつ。
 次の日、パジャマは着替えたところにあるはずです。(大抵は寝室にあるのではないでしょうか?)でももし、このパジャマを洗濯しようと思ったら、朝、顔を洗うついでに、洗濯機まで持っていきませんか?

実はここに動線のヒントが隠れています。パジャマを洗う洗わないにかかわらず、朝ついでに洗面所まで持って行き、洗う時は洗濯かごへ、もう1回着る時はパジャマの棚の一番上に置いてみてください。こうすればまた、お風呂に入る時にどこへも寄らずに洗面所へ直行できるというわけです。私はこの何かをついでにやるときの動線を「ついで動線」と呼んでいます。

動線と収納、暮らしの中でこの2つをセットで考ると、より効率のいい住まいが見えてきそうです。

洗面所の【グルーミングルーム構想】

洗面所のグルーミング(身支度)空間化を考慮して、動線を改めて見直すと、水まわりはできるだけ、寝室に近づけると住まいやすくなることがわかります。

小さな子どもがいて、夫婦ともに働いている。そんなクライアントの家づくりで、洗面所を充実させて「洗濯場&クローゼット」のスペースにした例です。寝室の奥に着替え室をつくり、洗面所と着替え室は引き戸を開けるとひとつの大きなグルーミング(身支度)ルームになるというプランです。

拡大図がご覧になれます。

忙しいお母さんは一か所でたくさんのことができるようになりました。子どもをお風呂に入れ、着替えさせる。朝歯を磨かせて保育園の制服に着替えさせる。自分の身支度「家中の衣類管理」も一括して洗面所(着替え室)です。
 さらに、洗面所の外に物干しスペースを設けたことで、洗う、干す、しまうが効率よくできるようになりました。洗濯機のスイッチを入れるのは妻の役目、干すのは夫の役目という役割分担も可能になります。出勤前のあわただしいなか、二階のベランダまで洗濯物をかかえて行って干すのは面倒でも、洗濯機のすぐ横に物干し場も物干し道具も用意されていれば、干すのはほんの十分でできます。
 乾いた洗濯物のうち、たたまなくていいものは、そのまま着替え室にあるクローゼットに平行移動。タオルや下着は、たたんだそばから洗面所内にあるリネン収納庫にしまえます。
ここでの動線は、「限りなくゼロ」に近づきます。

家事はほんとうに時間がかかります。効率よく暮らしてあいた時間に好きなことをした方が気分もよいでしょう。「家のなかを無駄に歩きまわるのは、人生の浪費にも通じる……」私はそう感じるのですが、いかがでしょうか。

『40代からの住まいリセット術 〜人生が変わる家、3つの法則』
【書籍のご案内】

『40代からの住まいリセット術 〜人生が変わる家、3つの法則』
NHK出版(生活人新書 329)

【ブログのご案内】

住まいづくりの中で感じたことや、収納やインテリアについて書いています。

素敵に暮らす住まいの作り方 (ホームページからも入れます)

【みずこし・みえこ】

一級建築士、キッチンスペシャリスト、日本女子大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

茨城県生まれ。日本女子大学住居学科卒業後、清水建設(株)設計部入社。
1991年からバンコクに渡り、企業とのコラボレイトで住宅設計やインテリアデザインの仕事に携わる。
現地で、インテリア講座の開催、タイハウスの研究、ジム・トンプソン博物館のガイド等、活動分野を広げる。
帰国後の1998年、秋元幾美と一級建築士事務所アトリエ・サラを共同主宰。
現在は主に住宅設計の分野で、建築デザインからインテリアコーディネイトまで、トータルで住まい作りを提案している。
近著に『40代からの住まいリセット術 〜人生が変わる家、3つの法則』(NHK出版・生活人新書 329)