住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

居心地の良い家は、自分らしさを住まいに表現すること

建築家 日本建築家協会会員 千ヶ崎 裕恒

暮らしに合った家づくりは、自分らしさを大切にすること。
暮らしを見つめなおすことからスタートします。
居心地の良い空間が毎日の生活に活力を与えてくれます。
〜建売住宅や住宅展示場の間取りがあなたに合う家とは限らない〜

住宅情報誌や住宅展示場では、最新で流行の住宅情報が入ります。
間取りの部屋数と建築の仕上げや設備機器を見て、"いい感じ"と家を選んでしまいそうですね。目の前にある既成の家があなたの暮らしに当てはまるのでしょうか。
住宅を建てる際には、まず、「暮らしを見つめなおすこと」が大切です。
重要なポイントは、一つ屋根の下で暮らすと、家族は、良い事も悪いこともお互いに影響しあいます。楽しいときも、イライラして話もしたくないときもあります。住宅の間取りと、日常の家族の生活習慣は、密接な関係にあることを意識してください。一日がスムーズに過ごせるように、トイレ、洗面の数や位置、広さもとても大切です。設計の依頼を受け、家族関係を推察して設計を進める段階で、夫婦の寝室を別室にするか、同室でもどのようにレイアウトするかは、現実に大きなテーマになります。
次に、生活スタイルとモノの選別です。たとえば玄関、靴入れやワードローブの中で、使うもの、あまり使わないもの、捨てられないものも家族ごとに異なります。朝の出勤、通学を気持ちよく、爽快に一日をスタートするには、整理整頓し易い玄関収納が欠かせません。そのためには、間取りや、収納を考える前に何が問題なのか見つめなおす作業が、大切なのです。
「自分らしさを大切にするには、気持ちが落ち込むときの自分だけの居場所・心の休憩室」を作ることも間取りには必要です。自分が元気であれば相手と優しく向き合えることもあります。
具体的に生活を見つめ直す方法としては、「暮らしシート」を作ることをお勧めしています。気がついたことをメモに残していくことが第一歩です。まず 現在の住まいで部屋ごとの書き込み用シートをつくります。家具も書き出し寸法を測り、衣類も備品も捨てるもの、取り敢えずとっておくもの、捨てられないもの、自分だけの宝物など、整理して記入してみましょう。このシートを家族全員が生活習慣上の問題点や、夢や希望など何でも書き込んでください。こうしたことで"ヒトとモノの関係""ヒトとヒトの関係"家族の全体像が見えてきます。
このように家族の暮らしを見つめなおすことが、暮らしに合った愛着の持てる住まいづくりの第一歩です。住宅を選ぶ前に、自分らしい家づくりを考えてみてはいかがでしょうか。

軟弱地盤・盛土・埋め戻し・崖地・谷地・水みち・竹やぶ(水位の高い柔らかな土地)は、要注意です。地形は地質を表しています。地震時に水位が高いと砂地では液状化現象がおこり、建物の倒壊につながります。台風や地震で一番影響を受け被害が発生しているのは崖地、谷地、軟弱地盤の地域です。土地選びは慎重に、水みちとなる谷地、沼地を避けてください。不動産広告には地盤状況や、造成前の地形図と埋め戻し情報は記入されていません。安い土地であっても地盤基礎に費用がかかるのでお買い得になりません。

あなたが主役の住まいづくり
三つの重要ポイント

〜住み続けられる価値のある家をつくろう〜
安全、良質な自分らしい住まいづくりを考えてみましょう。
〜住宅はゴミとなる大量消費財でいいのでしょうか。〜

家をつくるということは、誰にとっても人生の一大事です。その反面、築20年ほど経つと、立て替えを行わなければならない家が、増え続けています。戦後日本では、安易な持ち家政策の中で住宅着工件数だけが増大し続け、良質な住み続けられる家をつくる地域に根ざした建築組織が壊れてきてしまいました。物価上昇と土地の高騰の中で住宅の質の低下は、家を消費財と考える人を常識化してきました。
最近、日本でも古民家の再生が注目されていますが、30年40年経った家でも、良質なつくりであれば、改修して快適に住まうことが可能で、その実例も多くなってきています。
それらの家は、地盤・基礎・軸組(骨組み)が長い時間経っても耐えられる、しっかりしたつくりだということが再認識されています。 地盤・基礎・軸組にお金をかけた家は、築20年~30年で建て替えることなく、改修でより長く使えるはずです。この方がより経済的になります。日本の住宅着工件数がドイツの5倍、イタリアの15倍等、世界でも極端に多いのは、社会資本となるべき大切な住宅をより消費サイクルの短い、使い捨ての住宅になっていることを表しているのではないでしょうか。真新しい新築のうちは、うれしい気分で満たされても、生活スタイルや家族の成長によって家は変化、改修を余儀なくされます。時間の経過と共に家族も住まいも手入れが欠かせません。しかし、その要望に合わせて改修できない家だった場合、住まいの不満は、蓄積されていきます。
家づくりは多額のお金と労力を注ぎます。ですから、住まい手はその家からエネルギーをもらって、元気に生活していけるようでないといけません。ローンを組んでも、次の子供の世代を考えて、楽しく返せる、自分自身に還ってくるものの多い、愛着の湧く家にしたいものです。家をつくる喜びを大切にしましょう。
自分の代から子供や孫へ残していける、本当の意味で価値のある家は、住まい手の心がけ次第でつくることができるのです。 たとえば、植樹した木は、いつの間にか大きく成長し、生活環境に季節感や優しさを与え、住まいを引き立ててくれます。海外でも日本でも、古い建物が大切にされるのは、生活環境、自然環境の豊かさを育て、整備された地域です。素敵な街並みになるか、ならないかは住まい手の"街への想い"に拠るところが多いと思います。
家族の思い出を刻み楽しむ住まいづくりは、枝葉を広げて成長していく一本の植樹からも始まります。 〜「社会的資産となる家づくり」を進め、その家・街を後世に残していきましょう。〜

【ちがさき・やすつね】

(株)千ヶ崎・柳川・ズアー総合計画室 代表取締役 1953年生まれ
千葉大学大学院建築学修士課程を修了後、清水建設蠏築設計本部、椎名政夫建築設計事務所、統一前の西ドイツ名門の建築設計事務所ヘントリッヒーペシェニッヒ、パートナー事務所を経て独立。
住宅設計を中心に幅広く建築設計活動を行う。一級建築士。