住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

敷 地 は 安 全 で す か
〜安心して長く住める住宅のために〜

建築家 日本建築家協会会員 千ヶ崎 裕恒

家を支える地盤調査は必ず行いましょう。

家づくりは基礎を支える地盤を知ることから始まります。 昔から"家は見えないところにお金をかけること"と言われ、基礎・軸組み(骨組み)は大切と知っているはずですが、家のトラブルの原因の八割が地盤基礎に関わる問題です。新規の造成宅地、水田、畑を埋め戻した宅地、沼や臨海地域の埋立地、崖地の造成宅地など、新興住宅地には、実に危険な地盤が多くあることを認識しましょう。
 地盤の不同沈下は、建物の故障の原因となり、基礎の亀裂、外壁の亀裂、屋根壁からの漏水に繋がり、建ててからでは手遅れです。安心できる補修ができないのが、地盤のトラブルです。

軟弱地盤・盛土・埋め戻し・崖地・谷地・水みち・竹やぶ(水位の高い柔らかな土地)は、要注意です。地形は地質を表しています。地震時に水位が高いと砂地では液状化現象がおこり、建物の倒壊につながります。台風や地震で一番影響を受け被害が発生しているのは崖地、谷地、軟弱地盤の地域です。土地選びは慎重に、水みちとなる谷地、沼地を避けてください。不動産広告には地盤状況や、造成前の地形図と埋め戻し情報は記入されていません。安い土地であっても地盤基礎に費用がかかるのでお買い得になりません。

ポイント1 地盤の性格

敷地も生きています。地盤の性格、地質のメッセージをしっかり理解しよう。
〜地盤のボーリングは最低でも10mは行いましょう〜 サンプリング調査は重要

丈夫で長持ちする家づくりは、敷地を知ることが重要です。健康診断に行くと体の状況を知るために、血液検査で詳しい分析を行います。患者さんの結果はそれぞれ異なり、治療方法も検査結果を参考に検討されます。ハウスメーカー等で一般的に行われている簡易調査方法のスウェーデン式サウンディング調査では、地質の地耐力中心で、地盤の性格である「水位、土質、粘性、圧密度(沈下量測定値)等」は把握できず、誤診もあり大手住宅メーカーであっても、多くの地盤によるトラブル事例が報告されています。大切な家づくりで家が傾かない為に、20万円~30万程度の費用がかかりますが、ボーリング調査を必ず10m以上行い安心と安全を確保しましょう。

〜地質のサンプルと土質柱状図データーを自分の目で確認しよう。〜

地盤調査結果に基づき、地盤改良、杭の有無、基礎の選定と設計をそれぞれの地盤にあった最善の基礎を構造設計者と検討しましょう。(専門家の仕事です。)
家は大丈夫でも、ふわふわのベットマットのような地盤では、とても危険です。

ポイント2 基礎の設計と監理

設計士と地盤と基礎設計について話し合う機会を持とう
〜地盤調査データーと詳細な基礎設計図もない住宅建設が日本の現状です。〜

木造住宅は、鉄筋コンクリート造のビル建設と異なり地盤データーや、基礎詳細設計
(配筋図、基礎断面詳細図等)がなくても1/100の縮尺の概要平図面、断面図、軸組計算書、仕様書があれば役所の確認許可申請はおります。地盤基礎の設計は、建築士に任されているのです。工事監理の上からも設計士が施主側にたって詳細な図面を作り、現場に従属せずに現場監理を行うことが求められています。建売住宅は基礎工事に問題が多くとくに注意してください。現場を見ていると工事監理に誰も来ず、下請け業者任せの工事が横行しています。
 都内の設計実例ですが、地盤調査を行ったところ深さ約2mまで建築廃材とゴミが粘土と共に出てきました。いつ埋め戻されたのかわかりませんが、かなり年月が経った土地のようです。ここに家を建てたら当然不同沈下を生じる結果となったと思います。
基礎設計は、2.5mまでの柔らかい土とゴミをすべて掘り出し、約250万円余分に費用がかかりましたが、しっかりとした箱型の基礎を作り、建て主と地下倉庫として活用することで、問題を解決しました。しかし、同じ区画の隣地の建売業者は、建築条件付の物件として土地を売却し地盤調査もせず、敷地にゴミ廃材を残したまま、下請け業者任せの安普請の基礎工事で住宅建設し、概観だけは立派な高級住宅として販売してしまいました。
安心して長く住める住宅には程遠い実情です。これは特別な事例ではなく、地盤調査・基礎設計、工事監理を蔑にしている現場を良く見かけます。

きちんとした基礎をつくるには施工者の現場管理と設計者の工事監理が大切です。
〜基準に基づいた基礎なら良質な家の条件をクリア〜

基礎は後から見えない部分ですから、基礎工事を行っているときは、プロの設計士が特に何度も何度も現場に出向き、仕様どおりに工事が行われているか、要所要所でチェックを行う必要があります。これを工事監理といいます。また、施工管理者の監督が行うチェックは現場管理です。
 いくら良い工務店でも、職人さんが指示した図面とは異なる施工を行ってしまうことも
あります。お互いに施工ミスをいち早く発見できるか、また、その後のすばやい解決策を導き出すためにも、工事監理が大切です。工事監理を行うのは、建築士の仕事です。
建築士を選ぶうえで、設計計画だけでなく、こうした現場工事監理も非常に重要な選択肢です。地盤調査 設計計画から現場の工事監理まで一貫して行うことが基本です。

ポイント3 家族の成長を考慮する。

ライフスタイルの変化に対応
〜改修可能なしっかりした軸組みが将来の財産になる〜

家族の成長に合わせて、間取りの変化に対応できる家が理想です。 壁を自由に、取り外し易い空間を可能にするしっかりした構造軸組みが、安心して長く住める家に適しています。中古住宅としても、変化に対応できる空間は喜ばれます。  2×4(ツーバイフォー)工法などは、パネル化された壁や床などの面で家を構成しますので、間取りの変更などのリフォームを行うときに制約ができてしまいます。
 天井が高い、間口、奥行きが広いなど、空間を財産ととらえ、リフォームしやすいように建築空間を確保しましょう。  通風、採光も工夫次第で敷地条件をクリアーできるはずです。電気設備や通信設備を改修しやすくでき、定期的なメンテナンスが行いやすいことも、家を長持ちさせる重要なポイントです。電気や配管システムなど、設備面でも気を配りましょう。地盤・基礎・軸組みの三大要素の計画段階から設備面の配管配線も考慮して、20年後の改修に備えたいものです。長く住まえる安全で、良質な住まいづくりが実現できることが、幸せにつながります。


【ちがさき・やすつね】

(株)千ヶ崎・柳川・ズアー総合計画室 代表取締役 1953年生まれ
千葉大学大学院建築学修士課程を修了後、清水建設蠏築設計本部、椎名政夫建築設計事務所、統一前の西ドイツ名門の建築設計事務所ヘントリッヒーペシェニッヒ、パートナー事務所を経て独立。
住宅設計を中心に幅広く建築設計活動を行う。一級建築士。